部屋探しで「断熱」や「省エネ設備」という言葉を見ても、家賃や通学時間に比べると後回しにしがちです。でも、鳥取ではここを見落とすと、冬になってから「暖房をつけても寒い」「窓が毎朝びしょびしょ」「電気代が思ったより高い」と後悔しやすくなります。
この記事では、断熱窓や省エネ設備が本当に必要かという問いに答えたうえで、内見で部屋の「寒さへの強さ」を見分ける方法と、冬の電気代を入居前に見積もる考え方をまとめます。部屋探し全体の流れは「鳥取大学の部屋探しガイド」をご覧ください。
結論:必須ではない。でも優先順位は高い
断熱窓や省エネ設備がないと暮らせない、ということはありません。ただ、鳥取の冬は長く、日差しも少ないので、部屋の断熱の差が毎日の快適さにそのまま出ます。家賃や広さと同じくらいの重みで比べる価値がある、というのがこの記事の答えです。
特に重視したいのは、次のような人です。
- 寒さが苦手な人、太平洋側や暖かい地域から来る人
- オンライン授業やレポート、試験勉強などで、部屋にいる時間が長い人
- 同じ部屋に4年以上住む予定の人(差が毎年積み重なります)
- 部屋干しが中心になる人(結露やカビが出やすいかどうかに関わります)
反対に、部屋にはほとんど寝に帰るだけ、寒さは気にならないという人は、「窓」と「暖房設備」の2点だけ確かめれば十分です。家賃を上げてまで断熱の良い部屋を選ぶべきかは、後半の「冬の電気代を入居前に見積もる」で、計算の仕方と一緒に考えます。
鳥取の冬に断熱が効く理由
鳥取の1月の平均気温は4.2℃で、日照時間は月に69.0時間しかありません。8月(203.8時間)の約3分の1です。月の平均気温が10℃を下回るのは12月から3月までで、暖房を使う期間が長くなります(気象庁「鳥取の平年値」1991〜2020年)。
寒いのに外からの日差しには頼れないので、部屋の温かさは「暖房でつくった熱をどれだけ逃がさないか」で決まります。そして、その熱が一番多く逃げるのが窓です。住宅の省エネの資料では、冬の暖房中に家から逃げる熱のうち、58%が窓などの開口部からという試算が一例として紹介されています(東京都の家庭向け省エネ資料、出典は日本建材・住宅設備産業協会)。
断熱が弱い部屋では、次のようなことが起きやすくなります。
- 窓際が特に冷え、暖房をつけても部屋全体が暖まりにくい
- 窓に結露が出やすく、カーテンや窓枠にカビが生えやすい
- 暖房を強く、長く使うことになり、電気代がかさむ
冬の気温や雪の量をもっと詳しく知りたい人、結露や水道管の凍結の対策を知りたい人は「鳥取の冬はどれくらい寒い?雪国の一人暮らし、防寒・除雪の心構え」もあわせて読んでください。
窓を見分ける
内見で一番時間をかけたいのが窓です。窓ガラスの種類は、物件サイトの検索条件や間取り図には書かれていないことがほとんどです。自分の目で確かめるか、不動産会社に聞く必要があります。
窓ガラスの種類
賃貸でよく見るのは次の4つです。下に行くほど断熱の効果が高くなります。
| 種類 | つくり | 見分け方 |
|---|---|---|
| 単板ガラス | ガラス1枚 | ガラスの縁に帯がなく、横から見ると薄い |
| 複層ガラス(ペアガラス) | 2枚のガラスの間に空気などの層がある | ガラスの縁の内側に、金属や樹脂の細い帯(スペーサー)が見える |
| Low-E複層ガラス | 複層ガラスの内側に、熱を通しにくい薄い金属膜をつけたもの | スペーサーがあり、ガラスにうっすら色がついて見えることがある |
| 内窓(二重窓) | 外の窓の内側に、もう1つ窓がある | 窓を開けると、窓が2列に並んでいる |
同じ部屋でも、居室の大きな窓だけが複層ガラスで、浴室やキッチンの小窓は単板ということもあります。居室と寝る場所の窓を優先して見ましょう。
サッシ(窓枠)の素材
ガラスを囲む枠も、熱の逃げ方に関わります。アルミは熱を伝えやすく、冬は枠そのものが冷たくなって結露しやすい素材です。樹脂は熱を伝えにくく、外側がアルミで室内側が樹脂の「複合サッシ」はその中間です。
見分け方は簡単で、室内側の枠に触ってみて金属のひんやりした感じがあればアルミ、プラスチックのような感触なら樹脂です。学生向けの賃貸ではアルミサッシも多いので、アルミだからダメと決めつけず、ガラスの種類や結露の跡と合わせて判断しましょう。
内見での確かめ方
- ガラスの縁を見る。 縁の内側に細い帯(スペーサー)が通っていれば複層ガラスです。
- スマホのライトを当てる。 斜めから光を当てると、ガラスの表と裏で光が映ります。映り込みが2つならガラス1枚、4つなら2枚です。
- 結露の跡を探す。 窓のゴムパッキンの黒いカビ、窓の下の壁紙のしみやはがれ、窓台の水の跡は、冬に結露していたサインです。クリーニングできれいになっていても、窓枠の隅に残っていることがあります。
- 開け閉めしてみる。 閉めたときに隙間がある、鍵(クレセント)をかけてもガタつく窓は、隙間風が入ります。
- わからなければ聞く。 「この部屋の窓はペアガラスですか」と不動産会社に聞くのが確実です。内見に行けない場合も、電話やメールで確かめられます。
建物の構造と部屋の位置
窓の次に効いてくるのが、建物のつくりと、その中のどこに部屋があるかです。こちらは物件情報に書かれているので、内見の前に絞り込めます。
構造:鉄筋コンクリートは冷えにくい傾向
鉄筋コンクリート造(RC造)は、木造や軽量鉄骨造に比べて隙間が少なく、壁が厚いので、外の寒さの影響を受けにくい傾向があります。ただし、家賃は高めになりがちです。学生向けのアパートに多い木造や軽量鉄骨造でも、築年数が浅い建物や窓の良い建物なら寒さはかなり違います。構造だけで決めず、窓と合わせて判断しましょう。
位置:「外に接する面」が少ないほど暖かい
部屋の寒さは、壁や天井、床のうち外に接している面がどれだけあるかで変わります。
- 角部屋:窓が多く明るい反面、外壁が2面あるので冷えやすい
- 最上階:屋根から熱が逃げるので冷えやすい(夏は暑くなりやすい)
- 1階:床から冷える。足元が寒いと感じやすい
- 中間階の中部屋:上下左右を他の部屋に囲まれ、一番冷えにくい
角部屋や最上階は人気もあるので、避ける必要はありません。その場合は、窓が複層ガラスかどうかをより重く見ましょう。
向き:鳥取では「南向きだから暖かい」とは限らない
南向きの部屋は、晴れた日には日差しで暖まります。ただし先ほどのとおり、鳥取の1月の日照時間は月に69.0時間で、曇りや雪の日が多くあります。南向きでも日差しだけでは暖まらない日の方が多いと考えて、窓や暖房設備を優先してください。北向きの部屋は、結露しやすいので結露の跡を特によく見ましょう。
暖房と給湯の設備
断熱が「熱を逃がさない力」なら、暖房設備は「熱をつくる力」です。入居後に自分で変えるのが難しいので、内見で確かめておきましょう。
エアコンは「製造年」と「暖房の能力」を見る
備え付けのエアコンは、本体の横や下に貼られたラベルで製造年と型番がわかります。古いエアコンは最近のものに比べて、暖房の効きや電気代の面で不利なことがあります。かなり古いものが付いていたら、交換の予定があるかを聞いてみるのも手です。
もうひとつ見たいのが、エアコンの大きさと部屋の広さの釣り合いです。エアコンの「○畳用」は、冷房と暖房で別々に書かれていて、暖房の方が狭い範囲になっていることが多いです。型番で検索すると、暖房の畳数の目安がわかります。
冬のエアコンで知っておきたいのが「霜取り運転」です。気温が低く湿度が高い日は、屋外の室外機に霜がつき、それを溶かす間は暖房が一時的に止まります。鳥取の冬は湿度が高めなので(1月の平均湿度76%、気象庁の平年値)、エアコンだけに頼るより、こたつや電気毛布など体を温める器具と組み合わせるのが現実的です。器具ごとの電気代は「鳥取大学生の節約術」に表でまとめています。
灯油ストーブを使えるか
灯油ファンヒーターは部屋が早く暖まりますが、賃貸では契約で使用を禁止している物件があります。使いたい人は、申し込みの前に「灯油ストーブは使えますか」と確かめましょう。使える場合も、定期的な換気が必要なこと、灯油を買いに行って運ぶ手間がかかることは頭に入れておいてください。車や置き場がないと、ポリタンクの運搬と保管は意外と大変です。
オール電化の部屋とガスの部屋
オール電化の部屋は、コンロがIHで、お湯は電気で温める給湯機(エコキュートなど)を使います。ガス代がかからない代わりに、暖房もお湯もすべて電気代にまとまるので、冬の電気代の請求が大きく見えます。時間帯で単価が変わる料金プランを使っていることもあるので、契約前にどんなプランかを聞いておくと安心です。
ガスの部屋は、都市ガスかプロパンガスかで冬のガス代が大きく変わります。違いと見分け方は「鳥取大学生の節約術」のガスの節を読んでください。
このほか、浴室乾燥機があると冬の部屋干しの逃げ道になります(電気代は高め)。また、24時間換気のある部屋では、寒いからと止めてしまうと結露やカビの原因になるので、動かしたままにしておきましょう。
新しめの物件なら「省エネ性能ラベル」を見る
2024年4月から、新築の建物を販売・賃貸する事業者は、広告などに「省エネ性能ラベル」を表示することが必要になりました(国土交通省「建築物の省エネ性能表示制度」)。築浅の物件を探す人は、物件ページにこのラベルがないか見てみましょう。
ラベルで読むところは2つです。
- 断熱性能:段階で示され、段階が高いほど熱を逃がしにくい
- エネルギー消費性能:星の数で示され、星が多いほど光熱費がかかりにくい
「目安光熱費」が書かれているラベルもありますが、表示は任意なのでないこともあります。古い建物は表示が義務ではなく、ラベルがないのが普通です。その場合は、前の節の窓と設備を自分で確かめれば十分です。
コラム:鳥取県には国より厳しい断熱の基準がある
鳥取県は「とっとり健康省エネ住宅(NE-ST)」という、県独自の断熱の基準をつくっています。断熱の指標であるUA値(小さいほど熱が逃げにくい)で比べると、国の基準が0.87なのに対して、NE-STは0.48、0.34、0.23の3段階です。県は、冷暖房費をそれぞれ約30%、50%、70%減らせる目安だとしています(鳥取県「とっとり健康省エネ住宅」)。
ただし、この基準は新築の戸建て住宅が対象で、学生向けの賃貸アパートは対象外です。県がそこまでして住まいの断熱に力を入れているのは、それだけ冬の寒さと住まいの関係が大きい地域だからです。賃貸では数字で比べられないことが多いので、窓や構造を自分で確かめることが大切になります。
冬の電気代を入居前に見積もる
冬の電気代は、断熱、部屋の広さ、使う暖房器具、契約する電力会社で大きく変わります。それでも、入居前にできることはあります。
不動産会社に聞く3つのこと
- 前の入居者の冬の光熱費の目安。個人の情報なので教えてもらえないこともありますが、「だいたいでよいので」と聞くと、建物の傾向を教えてくれることがあります。
- 電力会社を自分で選べるか。建物ごとまとめて電気を契約しているマンションなどでは、自分で切り替えられないことがあります。
- ブレーカーの容量。冬はエアコンと電子レンジやドライヤーを同時に使う場面が増えます。容量が小さいとブレーカーが落ちやすくなります。
家賃の差と暖房代の差を比べる
「断熱の良い部屋は家賃が少し高い。その分を電気代で取り返せるのか」と迷ったら、次の式で比べられます。
- 1年で浮く暖房代 = 冬の1か月の暖房代 × 下がる割合 × 暖房を使う月数
- 1年で増える家賃 = 家賃の差 × 12か月
暖房を使う月数は、鳥取なら月の平均気温が10℃を下回る12月〜3月の4か月が一つの目安です。そのほかの数字は部屋や暮らし方で大きく変わり、賃貸アパートに当てはまる公的な数字もありません。そこで、下は仮の数字での計算例です。
| 仮の数字 | 1年での金額 | |
|---|---|---|
| 浮く暖房代 | 暖房代 月5,000円 × 20%下がる × 4か月 | 4,000円 |
| 増える家賃 | 家賃の差 月2,000円 × 12か月 | 24,000円 |
この仮の数字では、電気代だけで家賃の差を取り返すことはできません。暖房代は冬の数か月しかかからないのに、家賃は12か月ずっとかかるからです。自分の候補の家賃の差を入れて計算してみると、「お金だけならどちらが得か」の見当がつきます。
だからこそ、断熱の良い部屋は「電気代が得になるから」より、「冬の毎日が快適で、結露やカビに悩みにくいから」選ぶものだと考えるのが現実的です。寒さで勉強に集中できない、布団から出られない、という差はお金に換算できません。家賃の差が小さいなら断熱の良い方を、差が大きいなら「窓だけは複層ガラス」など優先順位をつけて選ぶ、という考え方がおすすめです。
一人暮らしの生活費全体の目安は「鳥取大学生の生活費は月いくら?モデルで約10.4万円|家賃・食費・仕送りと足りない分のバイト時間」で紹介しています。
内見で使える断熱・設備チェック表
内見のときにスマホで開いて使えるように、この記事で紹介した確認ポイントを表にまとめました。表の下の「断熱チェック」では、確かめた項目にチェックを付けて、結果をLINEで自分や家族に送れます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 窓ガラス | ・縁にスペーサー(細い帯)があるか ・スマホのライトの映り込みが2つか4つか ・内見の際にペアガラスか聞く |
| サッシ | ・触って金属か樹脂か |
| 結露の跡 | ・パッキンの黒ずみ、窓の下の壁紙のしみやはがれ ・内見の際に冬に結露しやすい部屋か聞く |
| 窓の閉まり | ・閉めたときに隙間がないか ・鍵をかけてもガタつかないか |
| 部屋の位置と向き | ・角部屋か、最上階か、1階か ・居室の窓の向き |
| 構造 | ・物件情報の構造と築年数 |
| エアコン | ・本体ラベルの製造年と型番 ・内見の際に交換の予定はあるか聞く |
| 灯油ストーブ | ・契約書の禁止事項 ・内見の際に使えるか聞く |
| ガス・給湯 | ・都市ガスかプロパンか、オール電化か ・オール電化なら料金プランを聞く |
| 電気の契約 | ・電力会社を自分で選べるか ・ブレーカーの容量 |
| 光熱費の目安 | ・築浅なら省エネ性能ラベルを見る ・内見の際に冬の光熱費の目安を聞く |
日当たりや自転車通学など、断熱以外の内見のポイントは「鳥取大学の部屋探しガイド」も参考にしてください。
寒い部屋に住むことになったら
家賃や通学を優先して、断熱が弱い部屋を選ぶこともあります。その場合も、できることはあります。
管理会社に相談できること。 窓がきちんと閉まらない、パッキンが傷んで隙間風が入る、エアコンの暖房が効かない、といったことは設備の不具合として相談できます。我慢せずに、早めに連絡しましょう。
無断でしないこと。 内窓を取り付ける、壁や窓枠に穴をあける、といった工事は、退去時に元に戻す費用を求められることがあります。やりたい場合は、必ず先に管理会社に相談してください。
自分でできること。 窓にはがせる断熱シートを貼る、床まで届く厚手のカーテンに変える、隙間テープを使う、ラグで床の冷えを防ぐ、といった工夫で寒さはかなりやわらぎます。具体的な方法と暖房器具ごとの電気代は「鳥取大学生の節約術」、結露や水道管の凍結の対策は「鳥取の冬はどれくらい寒い?雪国の一人暮らし、防寒・除雪の心構え」で詳しく紹介しています。
まとめ
断熱窓や省エネ設備は必須ではありませんが、鳥取の長く日差しの少ない冬には、部屋の差が毎日の快適さにそのまま出ます。内見では、まず窓ガラスと結露の跡を確かめ、次に部屋の位置と暖房設備を見ましょう。
家賃の差を電気代だけで取り返すのは難しいので、断熱は「冬を快適に過ごすための選び方」として優先順位をつけてください。寒さが苦手な人や、部屋にいる時間が長い人ほど、その差は大きくなります。

